Share

第2話 見習い魔女と出勤の空

Penulis: 173号機
last update Terakhir Diperbarui: 2025-03-16 22:58:28

 冬の満月をぼけぇっと眺めていると、つい欠伸がでてしまった。すると肩に乗っている青紫色のペンギンが大袈裟に嘆いた。

「はぁ、情けない」

 こんなのはいつものことだから私は気にしない。

 この執事気取りのペンギンはシラー・ペルビアナ。親父が投げてくれた袋に入っていた生き人形だ。

「仕方がないだろ。昼間にも働いてるんだ」

「じゃあ、せめて見習いは卒業して生活費を稼げる魔女になって下さい。そしたら昼間は働かなくていいでしょう?」

「……それができれば困ってないっての」

 この世界の魔女は通常夜に働く。なぜなら妖力という真っ黒な力を使うからだ。

 妖力は魔力と違って色んな属性がごちゃごちゃに混ざり合っているだけでなく、私にとって未だ理解不能な夜の力が根源となっている。反対に昼の力を根源としている真っ白い力を霊力と呼ぶ。

 悲しいことにどちらの力も私には扱えない。

 私は妖力や霊力と違って、この世界に微々たる量しか存在しない魔力をかき集めてなんとかやりくりしている。

 だから三十五年――いや、めでたく見習い三十六年目に突入した私が使用できる魔法は、簡単な占いに動物と話す魔法、あとはシビアな条件付きの召喚魔法くらいだ。

 覚えた魔法よりもよっぽど強力な種族的な能力も多々あるけど、やっぱり魔力が足りなくて思うようにいかない。

 まったくなんだってこんな……いや、愚痴は止めよう。辛くなる。仕事のことを考えよう仕事の……あ。

「シラー、今日はどこまで行くんだ?」

 そういえば行き先を聞いていなかった。重大な問題だ。見習い魔女が遅刻など許されることではない。

「さっきからずっと男口調になってますよ。今は魔女なんですから気を付けて下さい」

「わかってるよ。ええと、それで? どこに行くのかしら?」

 近くに魔女やその関係者がいるわけじゃないんだから別にいいのに。まあ、母にも自分や姉以外の魔女に”私”が本当は男だとバレないようにとキツく忠告されているから、シラーに従ってやらんでもないけど。

「旧水底駅ですよ」

 ぶっきらぼうに答えるシラーに目をやると寒そうにしていたので懐に入れてやる。少しだけ嬉しそうな顔をした気がしないでもない。

『嫌だなぁ。旧水底駅は水溜まりのずっ~と底でしょ? ちゃんと行けんの?』

 念話を使って話しかけてきたのは私が着ているダークグリーンのローブ。外出用の”私”ぴったりのサイズに縮んだデキるこいつはクリソ・ベリル。響きが可愛くないからベリーと呼んでいる。

「大丈夫よ。だって旧水底駅なら水色のビー玉を咥えて水溜まりに飛び込むだけじゃない」

『そういうことじゃないんだけどなぁ』

 きっとベリーは水浸しになるのが嫌なんだろう。でも私は水避けの魔法とか使えないから仕方がない。ていうか、そういうことを担当するのはベリーの役目だ。ローブなんだからさ。言うと拗ねるから言わないけど。

「仕事は駅舎の売店の手伝いってとこかしら」

 旧水底駅はすべての水溜まりから行けるので利用するものが多い。主に魔物とも精霊とも判断がつかない奴らだ。たまに神の使いや神様も利用しているし、稀に人間もいる。

 実は一般人には見えていないだけで、普通にJRRから延びているローカル路線の駅だったりする。つまりJRR職員はこういう一般には知られていない駅や存在を知っているのだ。ちょっと前に流行った、きさらぎ駅とかもこれに該当する。

「旧水底駅名物の新年水溜まり弁当は御利益が凄いですからね」

 シラーの言うとおり、あの弁当の御利益は凄い。食べれば一年間、雨上がりの水溜まりの中に必ずちょっとした良い物を見つけるようになる。

 ただでさえ新年は挨拶やら初詣で駅がごった返すのに、限定の名物駅弁の販売とくれば、売り子が足りないのも頷ける。

「でも変だわ」

 これは見習い魔女に頼む仕事じゃない。難しすぎる。

 この仕事は弁当の包装紙に呪(まじな)いをかけたり、お客に合わせて飲み物の調合をしながら接客する。一人前の魔女でもハードな部類だ。

『間違いだったんじゃない?』

「なら帰ってもいいかな。寒いのよ」

「駄目です。これは紫様が頼み込んで下さった仕事なんですから。もし、手が足りなくなったらでいいから白緑に声をかけてくださいと」

 胸の辺りでぬくぬくしているシラーが厳しい声をを出した。

 なるほど。だからさっきの母の微笑みには迫力があったのか。じゃあ今回は特に気合いを入れねばならない。

 一応、難関国立大学とされる日本魔女大学の魔女学部、現代魔女学科を最終学歴としている私だ。呪いや魔法はともかく妖力を伴わない調合なら自信がある。

「じゃ、行き先もわかったし早速、旧水底駅に行こうかしら。あそこのコンビニで水を買いましょう」

 『え、買えるの?』

「おい、さすがに水くらい買えるっての」

 いくらお金が無いとはいえ、水溜まりを作る材料くらい買える。馬鹿にしすぎではないだろうか。

「無駄遣いですね。公園の水になさい。あと口調」

 公園の水? そんなもので水溜まりを作ってみろ。 

「泥まみれで仕事に行くのは嫌なの。だって女の子だもん」

「あそこの公園には噴水があります」

 渾身のギャクは無視された。しかし噴水か。それはいいじゃないか。

「なら文句無いわ。二人とも、ちゃんと水色のビー玉は持って来てる?」

 二人の肯定を確認したあと、私もシラーに渡されたビー玉を咥え、勢いよく噴水に飛び込んだ。

 久し振りに調合でお金を稼げるとワクワクしながら。

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi

Bab terbaru

  • 見習い魔女竜胆白緑は四十六歳   第36話 見習い魔女と舐めプ

     どれくらいの時間だろう、薄暗い大穴の底で俺はこの三十六年が無駄ではなかったと自分に言い聞かせていた。 その甲斐あって、多少もやもやは残っているものの、なんとか落ち着きを取り戻せた気がする。「寒いな」 ベリーじゃない服は勝手に温かい服にはなってくれない。そんな当たり前のことに気付き、ベリーを羽織ろうと立ち上がった。「あっ……」  なんてことだ。俺はまだ十歳姿のままじゃないか。 イードの言っていたことが真実なのでは、と再び焦燥感に襲われる。けれど挫けそうになりながらも、なんとかベリーを起こして袖を通した。『ね、ねぇ白緑、イード様は?』「帰った」『本当に!? よ、良かったぁ~!』 ベリーは心底安心した様子で、某有名ゲームのピカピカ鳴くキャラクターのキグルミパジャマになってくれた。温かい。そして恥ずかしい。「励ましてるつもりか?」『え、なにが?』 あ、そうか。ベリーは失神してたから知らないのか。単に俺が十歳姿に変身してるだけだと思っているんだろう。「シラーも起こそう」 不思議がるベリーを無視してシラーをビンタする。それでも気持ち良さそうにスヤスヤしているシラーに少しムカついた。 今度は近くに転がっていた石で殴り付けた。するとフガフガ鼻を鳴らしながら目を覚まし、ハッとして、ベリーと同じことを尋ねてきたから、帰ったと伝えると、これまたベリーとまったく同じ反応をしていた。 そして例の話をする――『そ、そんなのってないよ。酷すぎるよ』「……イード様は無属性の魔法も得意でしたよね?」 今度はベリーとシラーでまったく違う反応をした。ベリーは同情して泣き、シラーは思案顔で質問してくる。 とりあえずシラーの質問だが答はイエスだ。 イードは森の化身のくせに無属性、とりわけその二段階上のレア過ぎる最上位属性の魔法を最も得意としている。「若返りの魔法をかけられたとかでは?」 ありうる。しかし、それなら記憶も十歳の頃に戻ってないとおかしい。若返りの魔法は外見のみに作用する都合の良い魔法なんかじゃない。 けど、あのぶっとんだイードのことだ。強引に魔法の何かしらを書き換えて、それすら可能に……うう、それはそれで恐ろしいな。あのちゃらんぽらんが、副作用とかそんなのを考慮するはずないんだから。 この世界でワンチャン、イードの魔法を解除できそうなのは……

  • 見習い魔女竜胆白緑は四十六歳   第35話 見習い魔女と思い込みの修行

     イードの顔が曇っていく。視線が俺からベリーとシラーへ移り、最高潮の曇り顔になるとゆっくり口を開いた。「あるいーどはもっと小さくて、あざとくて、わがままなクソガキだよ?」 は?「ある様のお膝の上に座りたいって癇癪を起こして暴力に訴える躾のなってない図々しいクソガキで、仕方なくお膝を譲ってあげたら優越感丸出しの濁った瞳で見下してくるよな性根のひん曲がったどうしようもないクソガキなんだよ?」 お? なんだ? 自己紹介でもしてんのか?  親父に可愛がられる俺が気に食わないからって、やりたい放題だったのはお前の方だろ。 俺のお気に入りの森に人喰い植物をわんさか解き放ったり、顔を合わせる度に広域殲滅魔法をぶっ放したり、アドロススルザイトも砕くようなヤバい蔓を出して「おしりペンペンだよ!」とか言って追いかけ回し、逃げ切れなかった俺が号泣すると、満足気に鼻を膨らませて二、三発叩いてから別大陸の大紛争地帯にポイ捨てしたこと、忘れてないからな。 親の自覚を欠片も持ってないクソオヤはそっちのくせに、俺のことを三回もクソガキ呼ばわりとは、マジでガチの本当にどの口が言ってやがる。 そう、言い返してやろうと思った矢先、空気が一変した。  「嘘ついたの?」 と、イードが言ったのだ。 イードは自分棚上げで嘘つきにやたら厳しい。 さっきまでと同じく、どこか間抜けさを含む幼い声色だったのに、常軌を逸脱してピリつく空気に心臓を鷲掴みされたような気分になる。 そこかしこに浮かんで楽園を醸していた花と蝶も同じだったのか、一目散に逃げていった。 イードに視線を戻せば、禍々しい凶器の形をした拷問用植物が何種類も体からにょきにょき生えているところで、それはベリーとシラーに向けられている。『うううううう嘘じゃないよ!』「そそそそうです! あれから三十六年も経ったんですよ! 見た目も中身も変わって当然です!」 「やっぱり嘘ついたんだね。嘘つきは泥棒の始まりだよ。二人もイードかりゃある様を泥棒するの?」 まったくもって噛み合わない会話に、理不尽が過ぎる怒り。恐怖と懐かしさで泣きそうになる。『白緑もなんか言ってよ!』「そうです! 自分のことなんですから自分で証明なさい!」 ベリーとシラーの必死さが過去イチだ。イードのご機嫌を損ねたら、例の如く千回死んだ方がましなくらいの地獄を味

  • 見習い魔女竜胆白緑は四十六歳   第34話 見習い魔女とバチカンの悪魔

     あれから二時間。 私たちは地獄にでも続いていそうな底の見えない大穴を下っていた。 直径は目測で百メートルちょっと。薄暗いのにやたら鮮やかな緑色の植物が繁茂しており、壁に沿って螺旋を描くように階段が作られている。手摺はない。そのくせ、人が一人歩けるかどうかといった幅しかなく、歩みを邪魔する植物も相まって、いつ足を踏み外してしまうかと気が気じゃなかった。 箒もなけりゃ魔力も足りない今の私は飛べないのだ。 先頭にグラスル、次に私。そしてマルテーノを除く司祭四人がその後ろを歩いている。  時おり、真っ暗な大穴の底から光の粒と共に風が吹き上げてきてバランスを崩しそうになる。ただでさえ足元が覚束ないのに、その度にすぐ後ろのヒョロガリ金髪司祭が私の肩を掴んで耐えようとするもんだから、本当にいつ落下してもおかしくな――っ!?「きゃっ!」 ほら見なさい。今、まさによ。ヒョロガリのせいで遂に私は足を踏み外し階段から転げ落ちた。 幸い、ぶっとい蔓草を掴んだお陰で事なきを得たけど、堪忍袋の緒はぶちギレよ。 だって私を犠牲にして助かろうとしたヒョロガリも、その甲斐虚しく落下して、こともあろうに私の足にしがみついたのよ。 すぐさまグラスルが私たちを引き上げてくれたけど、もしこいつが異様に軽くなければ、今頃仲良く奈落へダイブしていたところだ。「ちょっと! いい加減にしなさいよ!」  ヒョロガリの胸ぐらを掴み、いっそ落としてやろうかと穴側へぶん回す。「や、止めてくださいぃ……」 いや、本当に軽い。たぶん一キロもないわ。こいつ人間じゃないわね。てことは、肩に手を置かれたときにしっかり体重を感じたのは何かしらの術か。 マルテーノといい、陰湿なことをしてくれる。こいつもキスの刑に処してやろうかしら。 「止めぬか」 ヒョロガリを締め上げているとグラスルが私の腕を掴んだ。「こいつのせいで死にかけたのよ?」 収まらぬ怒りが口の端をひくひくさせる。「そやつはタンポポの化身じゃ。お前を助けはしても、殺しなどせぬ」「タラサッキと申しますぅ……」 どういうチョイスよ。なんでタンポポ? 最初からここに案内するつもりだったんでしょ。ならせめて鳥の化身やパラシュートの付喪神とかにしてよ。つーかさ……「どう考えても玉砕覚悟で殺そうとしてたわ」「ひねくれておるのう。肩を押したの

  • 見習い魔女竜胆白緑は四十六歳   第33話 見習い魔女と優しい男たち

     拘束具は私とベッドを合体させるものだった。下半身をベッドに引きずり込まれ、私のか弱い爪先を犠牲にしながらマットや底板を突き抜ける。あっという間に直立状態で固定されてしまった。 海水浴で浮き輪がないからベッドを持ってきたよって言い出すような、やべぇ馬鹿みたいな格好だわ。「身動きできなくなるよりましであろう?」 これを身動きできなくなるよりまし、と断言するジジイはまともじゃない。拷問のしすぎなのでは?「痛いじゃない。女の子には優しくって教会では習わないみたいね?」「習わんのう。教会は性別で優しさを区別せんからの」「あらそう。じゃあ魔女には必要ないってだけなのかしら」「そんなことはない。哀れな魔女にも優しさを持って接しておるぞ。ほれ、現にお前を魔女としてではなく、シスターとしてこの聖域に招待しておる」 魔女としてここに招かれることは、死または永続的な拷問と同義じゃが? と続けるジジイ。 やっぱりか。この言い方、拷問が日常に組み込まれてやがるわ。仮に今のが冗談だとしても、それ自体が真実だと知っているせいでまったく笑えない。「白緑のためにシスターの実績だって作ってあげたのよぉ。ねぇ、杉村?」「はい。二ヶ月ちょっとで三百人、魔女を浄化しましたもんね。はぁ、戦う乱子さんも綺麗だったなぁ……」 牢の外から会話に入ってきたかと思えば、私にとんでもねぇ罪を擦り付けていたと自白した乱子と杉村が、TPOを考えずイチャイチャし始める。「夜鶯胤夫妻がお帰りじゃ。送って差し上げなさい」 わざとらしく「ごほん!」と咳払いをしたジジイの指示で、赤紫ボタンの聖職者服たち全員がかりで二人をどこかへ追いやっていく。 さっきまで乱子が立っていた辺りに、至極色の透け透け下着が落ちている。やっぱ頭沸いてるわねあの痴女。「さて、改めてじゃが、初めましてシスターロシティヌア。儂はローマとバチカンに広がるこの聖なるカタコンベの責任者、グラスルじゃ」 ジジイが微笑む。さっきからやたらボタンを触っているんだけど、癖なんだろうか。それとも緋色を自慢したいのか……確か緋色は枢機卿の色よね。さっきまでいた赤紫は司教で黒一色は司祭。うろ覚えだけど、たぶんそう。「軽々しくロシティヌアだなんて呼ばないで」「貴様!!」 司祭たちが私に掴みかかろうとしてきたのをグラスルが止めた。「よいよい。ロ

  • 見習い魔女竜胆白緑は四十六歳   第32話 見習い魔女と並行世界の夢

     今や三つ巴……と言いたいけど、実際は同期の魔女と男性教諭連合VS校長と遅れてやって来たマル魔三人&目を覚ました生徒たち。 私は戦闘が始まった瞬間に食堂の調理場へ駆け込み、鉄壁の防御を誇る大型冷蔵庫の中に隠れて様子を伺っている。『たたたたたた大変だよ白緑!』 そこへ、ベリーが戻ってきた。 どうせベリーのことだから、大変とか言いながら私を置いてトンズラかますと思ってたのに、不思議なこともあるものね。 しかしその理由はすぐにわかった。『くるくる蓑虫が蛹になってるよ!!』『さ……蛹!!? なんで!?』『なんでもなにも春じゃん! 蛹になる季節じゃん!』 やいやい喚きながらも素敵な防寒具になってくれるベリーは打算的だ。外も食堂も危険ときて、結局この冷蔵庫が一番安全と考えたのだろう。私のご機嫌を損ねて追い出されるのを危惧しての防寒具、だ。『放置して逃げるって手もあるけど……』『駄目だよ! ここが使えなくなっちゃう!』  ことを収めたとしても、この食堂を使い続けるのは不可能でしょうに。『どっちにしても戦いが収まらなきゃどうしようもないわ』 今はどちらが優勢とも言い難い。 校長はマル魔と連携しながら乱子たちを攻撃しつつ、生徒に指示を出している。騒ぎに気付いた教職員や生徒も続々と駆け付けており、数では圧倒的。 対して同期たちは、主に乱子が二十体の杉村型ホムンクルスと共に校長を相手取り、他は男性教諭と二人一組で乱子の補助とマル魔の相手、それから生徒たちの無力化を担っている。 ジズのパートナーは堕としがいのありそうな堅物顔の図書教諭、銀花は雅な雰囲気の養護教諭で、ヤスエはショタ顔の家庭科教諭と組んでいる。 そしてティティとメグミは、それぞれ刺青だらけの美術教諭とヲタクっぽい音楽教諭……皆、同期たちのタイプに突き刺さる若いイケメンだ。 彼らは普通の学校ならメイン扱いされず、お気楽仕事と揶揄されかねない悲しき教諭ばかり。しかしここは退魔師の学校。すべてメインの戦闘教科であり、大学でド級の実戦訓練を積んできた猛者に違いない。 現に図書教諭は聖書や魔術書を何冊も周囲に浮かべて凄まじい攻撃を繰り出しているし、養護教諭はチート染みた回復術と絶対使っちゃいけない恐ろしい薬品の散布や、養護理念違反甚だしい医療道具による急所狙いを仕掛けている。 家庭科もヤバい。毒

  • 見習い魔女竜胆白緑は四十六歳   第31話 見習い魔女とアサガオの花言葉

     あの短剣で燃やせば証拠は欠片も残らない。少し気が早いけれど、裏切り者の乱子共々校長を始末できて気分は上々。 あとはあの写真を出版社に売り付ければお小遣い稼ぎもできて、一石二鳥どころか三鳥だ。 少し癪に障るけど、あの童顔中年と私が変身していた被害者男子はよく似ていた。校長にイケナイ薬を盛られて襲われた挙げ句、オーバードーズで死にかけたところを”シスターの私”に救われた。良司さんの毒薬被害者も校長の仕業で……という筋書きよ。 今となっては私をシスターに仕立て上げた理由は不明だけど、せっかくだから利用させてもらおう。『いやぁ~白緑がぼくのために殺人だなんて、ちょっと感動しちゃったよ』『殺人? 馬鹿言っちゃいけないわ』 私はそんなことしない。あれは正当防衛よ。それもとことん優しい。 だって校長は私がありもしない罪を着せようとするもっと前から、私をバチカン送りにしようと企んでいたのよ。完全に消しにきていた。 マル魔にしてもそう。奴らはこれまで何人もの魔女を屠っているし、私の大切なベリーに拳銃を向けていた。それにほら、まだ誰も屠ってなさそうな新卒君は助けてあげたじゃない。 だいたい、私はあの短剣をきちんと暴発させたわけで――『え、帰らないの?』 言いながら生徒教職員が倒れている廊下を進み、南校舎に差し掛かったところでベリーが聞いてきた。ずっと怠そうに無視していたから、話題を変えたかったんだろう。『阿叢先輩がトンカツ奢ってくれるって言ってたのよ』『ええ~? この状況じゃ無理なんじゃない?』『食券が欲しいの。一ヶ月有効なんだから』 きっと来月にはこの学校も通常通りになっている。 少しは騒ぎになるでしょうが、所詮校長なんてすげ替え可能な消耗品。どうせ次もそれなりの実力者が選ばれるんだから、誰がなろうと大差ない。 それに理事会とかが全力で不祥事を揉み消すに決まっている。大事にならないのは確実。『食券を回収したら食材もいただくわよ。今夜は豪華な食事でベリーの慰労&乱子の破談お悔やみ会よ』 あの堅牢な冷蔵庫を抉じ開けるのなら大変だけど、幸い私は正規の開け方を知っている。食堂のおばちゃんを何度も観察していてピンときたのよ。『あ、それいいね!』『そうだわ。同期の皆も招待しなきゃ。きっと大泣きしながら集まるわ』 悲しみではなく爆笑で、だけど。 にし

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status